【読書感想文】 山田 真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

山田 真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

内容紹介(Amazonより)
あの店はいつも客がいないのになぜ潰れないのだろうか?――この本では、日々の生活に転がっている「身近な疑問」から考えることで、会計の重要なエッセンスを学んでいきます。細かい財務諸表は出てきませんし、専門用語もそれほど多くありませんので、気を楽にして、ひとつの読み物として読んでみてください。「会計が嫌い」「会計が苦手」「会計を学んでも意味がない」と思っている方でも、きっと会計に対する見方が変わるはず。
10年以上前のベストセラーを今さら読んでみました。
サブタイトルに『身近な疑問からはじめる会計学』とありますが、これはウソ。この本を読んでも会計学は身につかないでしょうね。
スタートラインに立つ前の本、「会計学っておもしろいかもしれないな」と思うための本ですね。

新書ですが、内容は会計士のエッセイといった感じです。
エッセイとして読めば、なるほどこういう考え方をする人もいるのか、という発見があっておもしろいです。


ぼくは、自分では合理的な生き方をしている人間だと思っていたのですが、この本を読んで「いっときの感情で動いて会計的に合理的な判断ができていなかったなあ」と反省しました。

「普段はケチケチしてもいいけど、たまにはパッとしたい」という人もいるが、これはかなり危険な思想である。
 たとえば、毎日100円節約して、たまにパッと5万円を使った場合、次のようになる。

 100(円)×365(日)-5万(円)=△1万3500円
               (△はマイナスを意味する)

 残念ながら赤字である。こういう人は非常に赤字を出しやすい性質なので、経営者には向いていない。要は、節約した気になっているだけで会計を見ていないのである。

ぼくなんかまさにこのタイプですね。
お菓子を買うときなんかは「こっちは120円もするのか……、じゃあ100円のほうにしとくか」なんて節約してる(そもそもコンビニでお菓子をいっぱい買いこんでるのにそれが節約になるのか、は置いといて)のに、飲みに行ったときは「いいよいいよ800円くらいの端数。出しとくよ」って言っちゃうし、旅行に行ったら「せっかくの旅行だからケチケチしたくないよね。1万円高いほうのプランにしとこう」と豪気(1万円ですけど)な会計をしちゃいます。

ふだんの節約がふっとぶ、それどころかトータルで見たら大赤字ですよね。
これで自分のことを合理的と思ってたんだから、恥ずかしいかぎりです。
数字をつきつけられないと、なかなか自分の愚かな行動ってわからないもんですね。

 また、在庫は悪だという考え方を持っていれば、買い物をするときの行動も変わってくる。
 たとえば、買おうとしているモノが「1コ100円」と「5コ400円」で売られていたとしたら、単価では100円と80円であり、まとめ買いしたほうが得な気がする。
 しかし、結局は2コしか必要ではなく、3コが在庫として残ってしまって損をするなどということはよくあることだ。この場合だと、2コで400円も払ったあげく、捨てる手間までかかっているのでまったくの無駄だ。
 潰れる企業は、大量に仕入れたことで失敗していることが多い。大量に仕入れても結局は売り尽くせないから、在庫がたまってしまって、でも代金の支払いはあるからにっちもさっちもいかなくなって、それで大安売りセールをして大赤字というパターンだ。

これもぼくが頻繁に陥るワナです……。
1個あたりの単価が安いものを買って、「いい買い物をした」と満足してしまうパターン。

単3電池を買いに行って「どうせいつかは使うものだから」と30本入りくらいのやつを買ったことがあります。
で、年に数本しか使わなくて、ふと見たら保存状態が悪くて残りのやつは錆びてる。液漏れが怖くて使えない……。
まさに「大量に仕入れたことで失敗している」パターンですよね。
必要な分だけ買えばいいんだけど(ぼくがまとめ買いをしちゃうのは出不精だから、って理由もあります)。


会計下手なぼくでも、一応個人としては今のところ借金もせずに生きていくことができています(本以外に趣味がなくてあんまり使わないからね)。

でもぼくが経営者だったら企業はすぐにつぶれちゃうだろうなあ。
びびりだから思い切った投資はできないし、銀行からお金を借りるのが嫌だから出すべきところでケチケチしちゃうだろうし……。

 大企業には財務部という部署があるが、この部署は単に銀行からお金を借りる窓口というわけではない。銀行からいつどのくらいお金を借りて、いつどのくらい返せば資金がマイナスにならないかということをこと細かく計算して、資金ショートの回避のために日々心血を注いでいる部署なのである。
「資金がショートしないように、多めに借金をしたり、多めに貯金をしておけばいいじゃないか」と思う方もいるだろうが、そう話は単純ではない。
 多めに借金をしたら、当然利子も多く支払わなければならないので利益を圧迫することになる。また、多めに貯金をすれば、「だぶついたお金があるのなら、株主への配当や、もっと利まわりのいい投資にまわすべきだ!」という株主からの圧力が出てくる。
 つまり、ギリギリのラインで資金を持っておく、という難儀なことを行う部署が財務部なのである。

マイナスが良くないというのはぼくでもわかるんですが、利益を出しすぎるのも良くないんですね。
個人だったら、所得には税金がかかるけど貯金にはかからないから、どれだけ貯めても貯めすぎってことはないんですけどね(死んだら相続税で持っていかれちゃうけど)。

多すぎず、少なすぎずのところに持っていくっていうのはしんどそうだな……。
ぼくは「予算10万円でやりなさい」って言われたら「予算オーバーしちゃいけない」という気持ちが強すぎて7万円くらいのところに抑えちゃうタイプなので……。

つくづく「自分は企業経営に向いてないんだな」ということを知らしめてくれる本でした。


 その他の読書感想文はこちら



0 件のコメント:

コメントを投稿