2017年11月18日土曜日

高級食パンが教えてくれた残念な真実

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職場の近くに、行列のできる食パン屋さんがある。
「高級生食パン」と店には書いてある。いつも人が並んでいるのだからよほどおいしいのだろう。

ずっと気になっていたのだが行列が嫌いなので買ったことがなかった。
ところがある日、店の前を通りかかるとたまたま行列がゼロだった。これはチャンスと中に入ってみた。どうやら閉店間際のようだ。
「まだパンありますか」と訊くと、店員のお姉さんは言う。

「一斤のパンは売り切れてしまったんです。でも二斤を半分にしたものならまだありますが」

???

一斤はない、しかし二斤を半分にしたものはある。
ぼくの頭は混乱した。二斤を半分にしたものは一斤じゃないのか。わけがわからない。こんなに混乱したのは高校の化学の授業で「1モルの二酸化炭素の中には1モルの炭素原子と2モルの酸素原子があります」と習ったとき以来だ。
どういうことだ。一斤という単位はモルのようなものなのか。一斤のパンは何モルのイースト菌に相当するんだ。

パニックのあまり「うわああああ」と声を上げる寸前で、見かねた店員さんが説明してくれた。
「一斤用の型と、二斤用の型があるんです。一斤用の型で焼くと周囲すべてに焼き後がつくんですが、二斤用のパンを半分にしたものには焼き後のない面があります」

ふむ。正直よくわかんなかったが、とりあえずわかったような顔でうなずいた。化学の先生が一生懸命モルの説明をしてくれた後に「長々と説明してくれたのはありがたいですがさっぱりわかりませんでした」と言う勇気がなくてあいまいにうなずいた高二の夏と同じように。

一斤四百円もした。たけぇ、と声に出しそうになった。これ買うんだったらベンツ買えるじゃん、と思った。どんなベンツだ。
しかし今さら「持ちあわせがないのでやめときます」とは言えずに、なけなしの四百円をはたいて高級食パンを購入した。





翌朝、食べてみた。焼かずにそのままちぎってお召しあがりくださいと書いてあったので、ほんとはトーストしてバターとハチミツをたっぷり塗って食べたかったのだが、言われるがままにそのまま食べてみた。

ふうん、まあふつうの食パンよりはおいしいね。うん、そのまま食べても苦にならない。ぜんぜん食べられるな……。

ここで気がついた。

ぼくは食パンが嫌いなんだ。

おまえは今まで食ったパンの枚数を覚えているかと問われても困ってしまうぐらい多くの食パンを食べてきたけど、そしてずっと気がつかなかったけど、ぼくは食パンが嫌いだったんだ。
ジャムを塗ったりハチミツをつけたりチーズを乗せて焼いたりしてごまかしていたけど、そもそも食パンが好きじゃなかったんだということに三十数年生きてきてはじめて気がついた。
マイナスからスタートしているから、「めちゃくちゃおいしい食パン」を食べても「これなら苦にならない」ぐらいの残念な感想しか出てこない。いやほんとはすごくおいしいんだと思う。じっさい、妻はおいしいおいしいと言いながらほおばっていたし。
でも妻はパン好きで、ふつうの食パンを+50ぐらいで食べているから高級食パンを食べて+95ぐらいの喜びを味わうことができる。でもぼくはふつうの食パンを-30ぐらいに設定しているから高級食パンを食べても+15ぐらいにしか感じられない。

「うん、まあいけるね」なんて言いながらも、我慢できずに途中からハチミツを塗って食べてしまった。
パンをつくった人にはほんとに申し訳ないと思う。新鮮なマグロの大トロをシーチキンにしてマヨネーズとあえて食べちゃうぐらいもったいない食べ方だと思う。
だからというわけじゃないけれど、これだけは言わせてほしい。高級食パン、四百円もするだけあって、ふわふわもちもちのすばらしいパンだった。ほんとにおいしかったよ(主にハチミツが)。


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