2017年11月14日火曜日

行司にスカウトされた男/三十六代 木村庄之助『大相撲 行司さんのちょっといい話』【読書感想】

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『大相撲 行司さんのちょっといい話』

三十六代 木村庄之助

内容(e-honより)
大相撲生活49年!その正確な裁きと美しい所作から名行司と称され行司の最高位「木村庄之助」を襲名。その後、惜しまれつつ引退した著者がコッソリ明かす、土俵のウラ話エッと驚き、フムフムと納得!大相撲ファンはもちろん、「裏方仕事」に興味津々の方も必読!

まず悪い点を言っておくと、つまんねえタイトルだってことだね。
なんかコンビニに並んでる安っぽいマンガのタイトルみたい。

まあタイトルはべつにして、内容はおもしろかった。

こないだ 『進学か、就職か、それとも行司か って記事を書いたんだけどね。
行司ってどんな人がなるんだろうと疑問に思ったよって話。力士はわかるじゃん。身体が大きくて力持ちがなるんだろうなって。でも行司を志す理由はよくわかんないなって。
この本に答えは書いてありました。今は相撲好きの少年や体格が伴わず力士になることを断念した少年が志願するらしい。でも三十六代木村庄之助さんの場合は、なんと"スカウト"だったんだって。
相撲部屋の親方のほうから鹿児島にいる少年を「君、行司になる気はないか」って誘ってきたのだとか。スカウトされて力士になったって話は聞いたことあるけど、行司もスカウトするのか。
そうやってスカウトした少年が後々行司の最高位となる木村庄之助になったわけだから、スカウトした親方の目に狂いはなかったわけだ。どこに光るものを感じたんだろうね。公平かつ迅速なジャッジをしそうとか、見る人が見ればわかるものなのかね。




一年を 二十日で暮らす いい男
って狂歌がある。
昔の相撲は年に二場所、一場所十番しかなかったから年に二十回相撲をとるだけでいいなんてうらやましい身分だ、って意味。もちろん稽古だの巡業だのあるけれど。

でも、もっといい男なのが行司だね。なんたって最高位木村庄之助ともなれば行司を務めるのは一日に一番、結びの一番だけなんだから。ハッケヨイって言っておけばいいんだから楽な商売だ。
なんて思いません? ぼくは思ってましたよ。

 行司の仕事は大きく分けて、5つあります。
 1つ目は、土俵に上がって、相撲の勝負を裁くこと。そして2つ目、本場所中は毎日、審判部と協議して、力士の取組を作ることもします。翌日の取組は、前日までの力士の星取表をあれこれ見比べながら、より盛り上がる取組を考えて、組み合わせていきます。3つ目は番付を書く(相撲字の習得)こと。また4つ目、本場所のとき「東方、稀勢の里、茨城県牛久市出身、田子ノ浦部屋」という場内アナウンスをおこなうのも、行司です。最後の5つ目には、地方巡業の時の会計や、引退相撲、力士の冠婚葬祭などのイベントごとの事務作業に携わるという業務もあります。

いろんな仕事してたんですね、ごめんなさい。
番付を書いたりアナウンスするのも行司なのね。意外。
体力、瞬発力、判断力、発声、書道、経理能力、事務処理能力などいろんなスキルが求められるわけで、これはたいへんな仕事だあ。

中でも番付を書くのはたいへんそう。
なんと手書きで、しかも下書きなしの一発勝負で書いているらしい。おまけに相撲字という独特のフォントを習得しないといけないため、番付を書くまでには何年もの修業が必要なのだとか。

 会議に立ち会った私は、自分自身で一覧表を作り、後日、相撲協会から出た正式なデータと見比べて、間違いがないかをチェックします。
 3〜4日間かけて、データをチェックした後、今度は協会に届いている改名届や引退した力士の情報をチェックして、人数を合致させる。それで、ようやく翌場所の番付を書く上でのデータが完成するのです。
 その後、助手2人と私で、データの読み合わせをおこなって、誤りがないか再度確認。「番付がすべての世界」であるがこそ、こうした作業はきっちりおこなわなければならないのです。
 番付を書くのは、10日間です。
 1日7時間から10時間程度、途中で1時間に1度は筆を休めながらの長丁場です。

ひゃあたいへんだ。しかも下書きなしで筆で書いていくわけだから、一ヶ所でもまちがえたら最初からやりなおしなのかな……。おお、おそろしい。[ ctrl ] + [ z ]で元に戻すってわかにはいかないもんね。
集中力のないぼくみたいな人間にはぜったいにできない仕事だ。こないだふざけて「行司になる道もあったのに進路指導の先生は教えてくれなかった!」って書いたけど、そうか、先生はぼくにはその資質がないと思ったからあえて行司を勧めなかったんだね。さすがだ先生、仰げば尊しわが師の恩。



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