2016年3月2日水曜日

【エッセイ】2011年の新卒採用面接は地獄だった

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 人事の仕事をしている知人が、
「2011年の新卒採用面接は地獄だった」
と語っていた。

 「どうしてですか」

「ほら、東日本大震災の直後だっただろ。だから『わたしはボランティアに取り組み~』ってやつばっかりなんだよ。ほんとつまんない。
 そりゃ多かれ少なかれボランティアしたのかもしれないけど。でも話す内容も同じようなことばっかだし。あれはつらかった」

 「なるほど。それを延々聞かされるのはたしかに苦痛ですね」

「だろ? あまりにもうんざりしたから、しまいにはボランティアって言葉を出した学生をかたっぱしから落としてやったよ。はっはっは!」

 「ひどい! ひどいけどその気持ちわかる!」

「でもさあ。そのときボランティアアピールがうっとうしいから落とした学生たち、採用しとけばよかったかなって、今になってちょっと後悔してんだよね」

 「やっぱりかわいそうに思えてきたんですか」

「いやぜんぜん」

 「え?」

「だってさ。安易に学生ボランティアするってことは、自分の労働の価値を安く見積もってるわけだろ? そういうやつは会社に入ってからこき使っても文句言わなさそうだし」

 「……」

「それにさ。まともな頭があれば、ど素人が被災地にボランティアに行くよりも、その時間にバイトでもして、バイト代を寄付したり、バイト代で被災地に旅行に行ってお金を使うほうが復興の役に立つってわかるわけでしょ?
 それがわかんないようなやつらだから、扱いやすいんじゃないかなって。目先に安いエサぶらさげときゃ都合よく動いてくれると思うんだよね。
 だからそういう安易な学生ボランティアも会社のために二、三人とっときゃよかったなって思うんだよね」

 「ひどい! ひどいけどたぶん正論!」


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