荒木飛呂彦 『ジョジョの奇妙な冒険』第3部
今さらながらジョジョ第3部(スターダストクルセイダーズ)を再読したので、感想。
■ ジョジョを読む順番について
聞くところによると『スター・ウォーズ』を観る順番って2つあるらしいじゃないですか。
「作中の時系列に沿って1→6」派と、
「公開された順に4→6→1→3」派。
最近7が公開されたことでややこしくなったけど。
同じく初心者がジョジョを読む順番も2つありますよね。
「そりゃあ1部から順番に」派と、
「いやいや退屈な1部から入るのはつらい。まずはスタンドの概念が出てくる3部から入って、おもしろいと思ったならさかのぼって1部に戻ればいい」派。
ぼくは「まずは1部。続いて3部」派ですね。
初心者には3部からが入りやすいんだけど、でもDIOの持つ悪の魅力や波紋の概念がわからずに3部を読むのはもったいない。
だから比較的短い1部だけは、退屈でも予習と思って我慢して読む。
それから3部に入ればすんなり物語に入れる。
という考えです。
2部はディオもスタンドも出てこないちょっと異色な話ですからね。いつ読んでもいいと思います。
■ 第3部の大枠としての感想
第3部って、良くも悪くもジャンプの王道ストーリーですよね。わかりやすい敵がいて、主人公はまっすぐなハートを持った強いやつで、目的を同じくする仲間たちとともに冒険をするっていうストーリー。
日本からエジプトに向けて旅をするという明確な軸があるので、物語がほとんど脇道にそれない。
4部は敵の姿が見えにくい上に本筋と関係のないストーリーが多いし(そこがおもしろいんだけど)、5部の主人公の目的は「イタリアでNo.1のギャングを目指す」という何それっていう夢だし、6部のボス敵は何がしたいんだかよくわからないし。
とにかく「わかりやすい」ってのが第3部の最大の魅力ですよね。
そこがつまらないって人もいるんですが、それは4部以降と比べての感想であって、やっぱり単体で見たら第3部はいちばんきれいにまとまっている作品だと思います。
■ 第3部に出てくるスタンドについて
はじめてスタンドが出てくるシリーズなので、わかりにくいスタンド能力はほぼないですね。第6部とかSBR(7部)は難解な能力が多くて「結局どういう能力だったの?」みたいなことがあるんですが、3部はいたってシンプル。
3部を通して読んでやっと「ああスタンドってこういうことね」と全貌が見えてくるというか。その後のシリーズに向けてのイントロ的なシリーズになっていますね。
ジョジョの戦いといえばパワーよりも「知恵比べ」の要素が強いですが、第3部に関していえば駆け引きはさほど多くありません。
紐状に変形できるハイエロファント・グリーンや念視ができるハーミット・パープルは、その個性的な能力のわりにあまり活躍の場にめぐまれず、第4部以降だったらもっと出番が多かっただろうにと残念です。
なによりかわいそうなのはマジシャンズ・レッド。炎のスタンドという汎用性の高そうな能力を持ちながら、まともに活躍したのは序盤のポルナレフ戦ぐらい。
途中戦線離脱するし、終盤はたいまつとして役に立ったぐらいだし、最後にはスタンドを出す間もなくDIOにやられるし、アブドゥルはずっと不遇の扱いでしたね。
一方、敵の方は個性派揃いで良かったですね。
DIOに負けてないんじゃないかっていうぐらい強い敵も多かった。
鏡の中を行動できるハングド・マンや、夢の世界を支配するデス・サーティーンは「こんなのどうやって倒すんだ!?」と思わせるほどの強い印象を残しました。
中でもぼくがいちばん好きなのは、異次元から出入りできるクリーム。螺旋状にポルナレフを追いこんでゆくところは、絵の魅力とともにジョジョ至上トップクラスのスリリングなシーンだった思います(なにより『亜空の瘴気ヴァニラ・アイス』ってサブタイトルはほんとかっこいい)。
■ ジョジョの絵柄について
ジョジョといえば?
スタンド? 波紋? 能力者の駆け引きバトル?
いやいや、一般の人に聞いたらいちばん多い答えは「あの濃すぎる絵」でしょう。
「あの濃い絵がうけつけない」
「いやいやそれがいいんだよ。ひとまず絵柄は目をつぶって読んでみなって。クセになるから!」
そんなやりとりを何十回見てきたことか(そして必ず平行線をたどる)。
思うに、映画でリメイクってあるじゃないですか。
何十年も昔の映画を、最新のキャストで撮りなおすやつ。『オーシャンズ11』とか。
あんな感じで、ポップな絵柄の漫画家がジョジョ第3部をリメイクするってどうでしょう。
まずは間口を広げて、入ってきてもらう。
おもしろさが伝わったら、荒木版で4部以降を読みなおしてもらう。
どうでしょう、このアイディア。
絵柄で敬遠している人にもぜひ読んでもらいたい作品ですから。
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