【読書感想文】 加藤 希尊 『The Customer Journey』

加藤 希尊 『The Customer Journey』

内容紹介(Amazonより)
The Customer Journey(ザ カスタマージャーニー)

企業と消費者の接点がデジタルチャネルの浸透により格段増え、情報収集・購買における意思決定のプロセスが激変している。
お客さまが理解できないという課題を抱える企業が増える中で、注目されるのが「カスタマージャーニー」という考え方。
2014年11月に日本のトップマーケター同士が集える場として設立した「JAPAN CMO CLUB」の活動を通じて、見えてきたデジタル時代に実現すべき、顧客起点のマーケティングの実践論、方法論を解説。
これまでCLUBに参加した約50の企業の中から、30ブランドのマーケターが考える、カスタマージャーニーも収録。
マーケティングの世界で流行りの言葉「カスタマージャーニー」。
顧客がどのように商品やブランドとの接点を持って認知し、関心を持ち、購入や登録に至るのか、というプロセスを旅に例えた言葉。カスタマージャーニーを可視化して分析することで、マーケティング活動の最適化をはかることが重要とされている。( マーケティング-X より)

言葉としては新しいですけど、要はお客さんが興味を持って調べて購入に至るまでのプロセスを想像してみましょう、ってことです。さほど新奇な考え方ではありませんね。


でもそのプロセスの中身は、これまでと同じというわけにはいきません。

 これまでは、全ての消費者に対して同じ情報やモノ、コトを標準化した形で提供するやり方が当たり前でした。マスプロダクトやマスマーケティングから、企業はまだ抜け出せていません。ところがスマート化が進むと、一人ひとりに合わせた情報やサービスを、必要なタイミングに合わせて提供できるようになっていきます。そのような時代においては、個々の消費者に合わせて情報やサービスを加工する、カスタマイズ性が価値になります。個人の嗜好や行動をもとにした、パーソナルで、プライベートな体験です。
 運動データをもとにした、トレーニングの遠隔アドバイス。自宅の消費量にあった効率的な電力サービス。購入傾向を反映した、ワインのオンラインコンシェルジュ。ワンプッシュでお米を買える買い物ボタンなども考えられるでしょう。

ほんの少し前まで、企業が何かを宣伝しようと思ったら手段は数えるほどしかありませんでした。
テレビCM、ラジオCM、新聞広告、折り込みチラシ、電車広告、雑誌広告……。だいたいそんなもんですね。
テレビも新聞も数社の寡占状態で、人々はだいたい同じような情報に接していました。

でも、あっという間にチャンネルが増えました。ニュースサイトは山のようにありますし、視聴する動画は無数にあります。
データも細かくとれるようになったので、
「7日以内に靴の通販サイトを見たことのある、家の購入に関心の強い30代の子どものいる女性」に向けてだけ広告を配信する、なんてことも難しくありません(GoogleとかFacebookではとっくにやってます)。

オンラインでの行動履歴や嗜好がマーケティングに利用されることに嫌悪感をおぼえる人も多いでしょうが、世の趨勢として、マーケティングが細分化されていくことには疑いの余地がありません。
大量生産・大量消費のやりかたしかできない企業は衰退していくことでしょう。



この本では、スマート化されたサービスの例として、UBER(ウーバー)の例が紹介されています。
UBERは、タクシーに乗りたい人とお客を乗せたいタクシー運転手をアプリでマッチングさせるサービスです。
タクシーに乗りたいことをアプリで意思表示すると、近くにいる運転手に連絡がいき、すぐにタクシーが駆けつけてくれるというシステムです。

ユーザーのメリットとしては「いちばん近い空きタクシーがすぐ来てくれる」「アプリにクレジットカード情報を登録しておけば一括決済できる」「タクシー会社を仲介しないので運賃が安くなる」など。
ドライバー側のメリットとしては「流して客を捕まえなくていい」「金銭のやりとりがないのでトラブルが少ない」「空いている時間だけ稼ぐことができる」ことなどが挙げられます。
また、流しのタクシーが減ることで、「交通渋滞が減る」「排気ガス削減になる」など都市単位でのメリットも考えられます。

日本ではまだこれからのサービスですが、ある程度登録ドライバーの数が増えたら、爆発的に広まるのではないでしょうか。

 先に挙げたウーバーの例を3つの視点で考えてみましょう。つながる技術は当然、乗客とドライバーが瞬時につながるマッチング技術です。マッチングの精度により、「短時間、短距離の乗車ニーズ」を数多く獲得し、質の高いドライバーが「安定した乗車体験」をいつでも提供できるモデルです。

 つまり、クオリティの高い「モノや体験」を、必要なときだけ、時間を問わずどこでも提供できる、これまでのビジネスモデルでは満たしきれない顧客ニーズを充足させているのです。「質」と「量」のバランスを取り、スマート化した「つながる」技術が顧客体験を向上している点に注目してみてください。


現在、都会ではうんざりするぐらいタクシーが走っているのに、ちょっと田舎に行くと駅前以外ではタクシーが捕まりません。
こうした状況も、UBERが解消してくれるかもしれませんね。
UBERがお客を見つけてくれるなら、田舎でもタクシーをやろうという人はいるでしょうし。場合によっては、「少々高くてもいいから乗りたい」お客さんと、「高い運賃をくれるのなら乗せてもいい」というドライバーをマッチングしてくれるかもしれませんし。



UBERって、技術的にはそこまでややこしいことをしているわけではないと思うんですよ。
タクシーに乗りたい人の近くにいる登録ドライバーに通知するだけですから。
でもこういうのって「最初にやったもん勝ち」で、1社がシェアをとってしまえば、他の会社がそこの市場で勝つのは難しくなってしまう。

ですから「思いつくかどうか」「それを実際に行動に移すかどうか」が勝負なんですが、まだまだこういうののはじまりってアメリカなんですよね。
日本では、こういうサービスを思いついても実現は厳しいでしょうね。
たぶん技術的なハードルよりも既得権益を守ろうとする既存タクシー会社の妨害にあって、法律の整備が進まないことでしょう。

「こんなにすごいぞ日本人!」なんて言ってひと昔前の技術を誇っている間に、アメリカの企業に利益を持っていかれちゃうんだろうなあ。




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