【読書感想文】中山 七里『贖罪の奏鳴曲』

中山 七里『贖罪の奏鳴曲』

内容(「BOOK」データベースより)
 御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇!

いろんな本を読みますが、めったにこういう感想は抱くことはありません。
この本の感想は
「おもしろいけど好きになれない小説」
でした。


いやほんと、おもしろいんですよ。
先が読めなくて気になりますし、へえそうなんだって思わされる記述もありますし、意外などんでん返しもありますし。
部分部分としてはすごくよくできている。


でも、トータルで見ると好きじゃない。



好きになれない理由を一言でいうなら、「うるせえよ」ってことに尽きます。

くどいよ。
知識のひけらかしが鼻につくんだよ。
調べたこと全部書かなきゃ気がすまないのかよおまえ司馬遼太郎かよ。
アイデア詰め込みすぎなんだよ。
音楽の美しさの表現がポエムみたいで気持ち悪いんだよ。

そういうのを全部ひっくるめて、「うるせえよ」



いやほんと。
「ちょうどいいところで抑える」ってことを知らないんでしょうか。
構想も大きく、取材も綿密で、しっかりしたテーマもあるんだけど、とにかくやりすぎ。

刑事小説も、法廷ものも、ピカレスク小説も、少年犯罪とその更正も、なにもかも書きたかったんでしょうね。
でもなんでそれを一篇の小説にしちまうんだよ......。
少年院パートなんて『ショーシャンクの空』みたいで、それだけで十分おもしろかったのに......。

なにもかも盛り込みすぎて、ちぐはぐな印象しか残らないです。
うんちくばっかり語ってる人みたい。
話の内容はおもしろいのに、どうしてもその人のことは好きになれない。そんな感じ。



あと特筆すべきは、台詞のくささ。

「いま、真っ先に俺から目ェ背けただろ。このガイ者、知ってるんだな。今更とぼけるなよ。こっちは年がら年中お前のにやけ顔見せられてんだ」
「と、と。警部の観察眼は相変わらず光センサー並みですね。おちおちよそ見もできやしない。慣れないブン屋なら間違いなく冷や汗垂らしてますよ」

「ワタクシも大抵嫌われていますが、それでもこいつよりはマシという自負があります。腐ってもワタクシはブン屋ですが、こいつは只のゴロですから」
「強請りの常習犯か。今までに何人がこいつの餌食になった?」
「さあ、五十か百か。とにかく加賀谷の収入源はそれだけだったようですから。警部にはお気の毒ですが、加賀谷を殺したいと思っている善男善女は両手両足じゃ足りませんよ」

「殺された加賀谷にしても瓢簞から駒だったのかもな。屍肉を求めて東條家の周囲をうろうろしていたら、偶然新鮮な生肉を発見したってところか」

どうです、この、五十年前の小説を読んでいるかのような、くさい芝居がかった言い回し。
やっこさんのこの言い回し、こいつはめったにお目にかかれない代物だぜ!
(言い回しが感染した!)



でもまあ。

いろいろと小ばかにしたようなことを書きましたが、ほんとにおもしろい小説なんですよ。
このまま書きつづけてたら、文章もこなれてきて、いい感じに肩の力も抜けてきて、すごくいいミステリ作家になるんじゃないかとも思います。
偉そうですけど。

と、とってつけたようなフォローをつけくわえて締めくくらせていただきます。


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