【読書感想文】曽根 圭介『藁にもすがる獣たち』

 

曽根 圭介『藁にもすがる獣たち』


内容(「BOOK」データベースより)

サウナの客が残していったバッグには大金が!?持ち主は二度と現れず、その金で閉めた理髪店を再開しようと考える初老のアルバイト。FXの負債を返すためにデリヘルで働く主婦。暴力団からの借金で追い込みをかけられる刑事。金に憑かれて人生を狂わされた人間たちの運命。ノンストップ犯罪ミステリー!
いやあ、実に「うまい」小説ですね。

曽根圭介のデビュー作『鼻』に奇妙な味わい深さがあったので、気になっていた作家でした。
でも『鼻』はおもしろかったけど、決してうまい小説ではありませんでした。
デビュー作だったこともあって、むしろ文章の拙さが目立ちました。
だからこそ着想の奇抜さが余計に光っていたのですが。

でも、この『藁にもすがる獣たち』はストーリーの転がしかたがほんとに鮮やかで、あの作家がこんなにうまくなるのかと驚きました。 


三人の登場人物が出てきて交互の視点で語られるのですが、この三人が三者三様にじわじわと追い詰められてゆきます。
このへんの描写がほんとに巧みで、読んでいて背中にじわっと嫌な汗が浮かんできます。

ぼくはよく、犯罪をして誰かに追われる悪夢を見るのですが(現実には追われるようなことはしてないんですけどね。まだ)、ちょうどそんな夢を見たときのような気持ち悪さがまとわりついてくる読中感でした。

ラストも救いのない感じですのでハッピーな話が好きな人にはおすすめできませんが、サスペンスミステリとしては上質な味わいです。



特に後半の怒濤の展開は見事。
ちょっとしたトリックが明らかになります。
そのトリック自体はさほど新奇なものではないのですが、ミスリードがうますぎて、まんまとひっかかってしまいました。


曽根圭介ってこんな重層的なミステリも書けるんですね。
まだ二作しか読んでませんが、底の知れない作家です。



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