2016年3月23日水曜日

【読書感想文】堀井 憲一郎 『かつて誰も調べなかった100の謎』

 

内容(「BOOK」データベースより)

1995年から2011年。まさに「失われた20年」と呼ばれる時期に、『週刊文春』誌上で連載されていた伝説のコラム「ホリイのずんずん調査」。どうでもよさそうなことから意味ありげなことまで、他に誰もできない(というか、やらない)調査の積み重ねから100の「謎」をセレクトした集大成。飲み屋の小ネタによさげに見えて、実は日本の20年までもが浮かび上がってくる―(かも)。ネットでは検索できない秘密がここにある。


週刊文春で連載していた「ホリイのずんずん調査」はおもしろい連載でした。もう終わっちゃったけど。
どうでもいいことを調べるためにとんでもない量のデータを集めていた。

「どうやって調べているのだろう」
と思っていたけど、連載をまとめた(というか厳選した)この本を読んで謎がとけた。

なんのことはない。足と労力と時間とお金を使って調べつくしているのだ。

と、かんたんに書いてしまったが、これはとんでもない調査だ。
「金のエンゼルの出現率を調べるため」にチョコボールを2,000個買ったり、
みんなが銀行の4桁の暗証番号をどうやって決めているか調べるために、
知人に「どうやって数字を決めたの」と訊いてまわったり
(かなり不審がられたらしい。あたりまえだ)

日本三景(松島、宮島、天橋立)を一日でまわったり
(強行日程のため宮島まで行ったのに厳島神社を見られない……!)

テレビ局全局の1週間の番組をすべてチェックして、
どのアナウンサーが映ってる時間がいちばん長いかを調べたり。
(24時間×7日×6局=1,008時間らしい。)


いや、すごい。
ぜひ堀井憲一郎氏に国の研究機関から金を出してあげてほしい。
1,000年後には貴重な史料になるはずだから。
(1,000年経てばどんな本でも貴重な史料になるはずだというツッコミはなしだ)


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いやでもほんと、「えーそうなんだ!」とおどろく調査結果も多い。

たとえばこんな調査結果。

寿司を「一貫、二貫」と数えるようになったのは1990年代で、それまでは「一個、二個」と数えていた。

これは、1990年前後の雑誌を丹念に調べてわかった事実だそうです。
知ってました?
ぼくは「一貫、二貫」は江戸時代からある数え方だと思ってました。
悪名高い「江戸しぐさ」みたいなもんなんですね。

1980年頃まで、クリスマスは子どもだけのものだった。カップルが一緒に過ごす日になったのはバブルの頃。

花粉症も1980年頃。もちろん症状はそれ以前からあったが、ほとんど認知されていなかった。

司馬遼太郎の『竜馬がゆく』以前は、坂本龍馬は明治維新において脇役扱いだった。
(というか実際に脇役だった)

1980年代生まれのぼくからすると、カップルのためのクリスマスも、花粉症も、龍馬を中心と歴史観も、あたりまえの話。
でもちょっと上の世代にとってはそんなことないんですね。
日本の「常識」って、けっこう最近つくられたものも多いのかー。
龍馬と自分を重ね合わせている人間はぼくも大嫌いなのだが、堀井氏もこう書いています。 

(国の制度作りに携わっていない)龍馬が幕末の人物のトップであると本気で言ってるのなら、国の運営はどうでもいいといってるようなものだ。
 だから現役政治家で「龍馬を政治家としてる」と公言して憚らない連中はチェックしておいたほうがいい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

あと大阪生まれ、兵庫育ちのぼくにとっておどろきだったのはこんな話。
エスカレーターでの立つ位置。右に立つのは大阪、兵庫、奈良、和歌山ぐらい。

「大阪は右だけど東京は左らしいよ」
そんな話は聞いたことがあったので、
「そうか、右に立つのは西日本だけなのか」 
と思っていた。

ちがうんですね。
中国も四国も九州も左。
圧倒的少数派だったとは……。

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週間天気予報はまったく当たってないという調査もおもしろかった。

週間天気予報127日分を調査。
そのうち雨は31日あったが、7日前に「7日後は雨です」と的中させていたのは1回だけ。
なんと的中率3.2%!

そんなにあたらないのか……。
冗談でもなんでもなく、下駄を転がしたほうがまだ当たるだろな……。

3日前でも38.7%
2日前で58.1%
前日でやっと77.4%

こんな的中率なのに、週間天気予報ってやる意味あるんでしょうかね。
ぼくも、週末に出かけるときは月曜日ぐらいから予報をチェックしてたけど、
こんなにいいかげんなんじゃ、なんの参考にもならないね。


いいかげんといえば相撲の仕切り時間。
4分以内に立ちあわないと決まっている。
ところが堀井さんが実際に計ってみたら、5分を超える取り組みはざらで、6分を超えるものもあったとか。

相撲好きのぼくも、おかしいと思ってたんだよなー。
相撲って競技時間は決まってないのに、いっつも夕方6時ちょうどに全取り組みが終わるもんなー。
すごく早く終わる日や、時間がないので横綱取り組みは放映できません、みたいな日があってもいいのに(相撲ファンとしてはよくないけど)。 

なるほど、NHKの相撲中継にあわせて仕切り時間を長くしたり短くしたりして調整してるんだなあ。
けっこうせこい。
なんでも調べないとわからないもんだね。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

笑ったのが次のふたつの調査。


・選挙で当選したときに、応援者がバンザイするのにつられて
 自分もバンザイしちゃうマヌケな議員は誰なのか。

・サッカーW杯におけるフリーキックの調査。
 ディフェンダーが前で手をあわせて股間を守る率が高い国はどこなのか。
 逆に、股間を守らない男らしい(?)国はどこなのか。


気になる答えは、この本で調べてください。
気にならないですか。そうですか。



ところで堀井憲一郎、データ収集の情熱もすごいけど、文章もうまいなあ。
コラムニストのお手本のような読みやすい文章を書く。

落語が好きだというだけあって、軽妙で洒脱な言い回しが光る。
重たいデータなのにそうは見えなくてとっつきやすいのは、この文章によるところが大きいはず。


「調べる」楽しさを教えてくれる一冊です。

 新大学生なんかに読んでほしいな。



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