2015年9月14日月曜日

【読書感想】 貴志 祐介『青の炎』




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「BOOK」データベースより

櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みに じる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そう としていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な 戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。


 殺人犯の立場から書かれた小説は、そう珍しくない。ミステリの世界には“倒叙もの”というジャンルがあるぐらいだ。
 ただそのほとんどにおいて、殺人犯は読者の共感は集めない。あくまで主役は探偵役であり、殺人犯は(多少の同情の余地こそあれ)許すまじ非道な人物だ。
 善良な市民である多くの読者は悪がのさばることを望んでいない。ピカレスクもののストーリーが支持を集めることは難しい。

 その難関に挑戦して、見事成功したのが『青の炎』だ。
 悪と戦うために自ら悪事に手を染める秀一は、殺人者でありながら、まぎれもないヒーローだ。

 ぼくは殺人を犯したことはない(まだ)。
 実刑を食らうような罪も犯したことはない(つもりだ)。
 なのにというか、だからというか、犯罪者として警察に追われる夢をよく見る。すごく怖い夢だ。追われつづけるのは自分が死ぬよりも怖い。もちろん夢だからすぐに覚めて、ああ夢か、よかったとため息をつく。
 その安堵のない日々が続いたらと思うと。
 いっそ捕まったほうが楽だとも思うし、でもやっぱり捕まるのもおそろしくてたまらない。

 逃げ場のない恐怖。それを嫌というほど味わえる小説だ。
 現実では味わいたくない感情を味わえる。小説の魅力をめいっぱい感じさせてくれる名作だ。



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