2015年8月24日月曜日

洗う石油王

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人と話すのが嫌いだ。

できることなら誰とも話したくない。
仕事中だって、隣の人ともチャットで話したい。
いわんや見ず知らずの人なんて。

とはいっても、仕事上、はじめて会う人と話さないといけないこともある。
イヤだけど、まだぼくの家の庭から油田が見つかって石油王になっていない以上、今のところ仕事をして稼がないといけない。

うちの会社では、お客さんが来ると受付の女性がお茶を出してくれる。
お客さんと話しおえると、ぼくはお茶の入っていたコップを持って給湯室へ向かう。コップを洗うためだ。
ほとんどの社員はコップを放置するので、ぼくのように洗いにいく人間はめずらしい。
受付の女性は「そんなことしなくていいですよ! わたしたちの仕事なんで」とか「洗ってくれるなんて優しいですね」とか言ってくれる。

ちがうんだ。
優しさから洗っているわけではない。
ましてや受付の女性によく思われたいという下心でもない(エロい目で彼女たちの尻を見つめることはあるけど)。

ただ洗いたいだけなんだ。
知らない人と話すとどっと疲れるから、食器洗いみたいに無心でできる作業をすることで、澱んだ精神を洗い流すのだ。

だからもしぼくの家の庭から石油が湧きだしたとしても、やはりぼくは仕入れに来た石油貿易会社の社員と話した後には、ひとり台所に行って黙々とコップを洗うことだろう。
油田つきの庭どころか、土地すら持ってないけど。

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