2015年4月11日土曜日

読書感想文『マネー・ボール』

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『マネー・ボール(マイケル・ルイス著)』読了。
すばらしい本だった。
野球に興味ある人も、興味のない人にも読んでほしい。

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◆ 野手の良し悪しを検討するのに「打率」「打点」「失策」はまったく必要ない。「出塁率」と「長打率」だけでいい。
◆「犠打」「盗塁」は攻撃機会を減らすだけの愚策。
◆ 被安打は投手の責任ではない。
(あくまでチームの勝利を目標とした場合の話)

野球をよく知る人ほど受け入れがたい理論がたくさん。
(ちなみにこの理論でいえば、打率のわりに出塁率や長打率の高くないイチローは「金がかかるわりに勝利に貢献しない給料泥棒」ということになる。かつてのマリナーズの成績を見ればそれもうなずける)

数字がこれらの理論を見事に裏付けていて、この理論を導入したアスレチックスは金をかけずに驚異的な成績を残しつづけている。

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しかし本当におもしろいのは
【この理論の正しさがアスレチックスに実証されても、取り入れる球団が少ない】という点。
現実の数字よりも「強気の姿勢が勝利を呼び寄せる」みたいな精神論の方が幅を利かせているからだ。

なぜなら、球団経営にあたっている監督、コーチ、GM、スカウトらが従来の野球理論で輝かしい実績を残してきたから。


成功者が「自分がやってきたやり方」を最良の方法だと思ってしまうのは
プロ野球経営にかぎらず、ビジネスなどの他の世界にも共通することだろう。

ぼくがスポーツ選手や会社経営者の“成功体験本”が大嫌いなのは、
「私はこうやってうまくいった。だからこうしなさい」
というまったく科学的でない論理にうんざりするからだ。

「自分の(たまたまの)成功体験」にとらわれて
「同じやり方をして失敗したケース」や
「別のやり方でもっと大きな成功を収めたかもしれないケース」が見えなくなってしまうのは恐ろしいことだ。

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100の事例から1の真理を得るのが科学。
1の事例から100の真理を得た気になるのが成功体験本。
ぼくは科学を信じる。





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